ハイスペック断熱材選び

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ZEHの基本知識~断熱~

ハイスペック断熱材
選び

ZEH住宅は省エネと創エネにより、エネルギー消費量を実質ゼロ以下に抑えた住宅のことを言います。省エネと創エネ、どちらが欠けてもZEHとは認められません。創エネは、太陽光発電システムや燃料電池の設置により実現し、省エネは住宅の断熱性能を高めたり、設備にこだわったりしてエネルギー消費量を抑えることで実現します。
断熱性能やエネルギー消費量を考慮するなら、断熱材にこだわるのが重要。ここでは、ZEH住宅づくりで大切な「断熱材の基礎知識」を解説します。

ZEHに求められる断熱性能

地域によりZEH住宅に求められる住宅性能は異なり、住宅建築にかかるコストが変わるため注意が必要です。地域区分は1~8の8段階に分けられており、主な該当エリアは以下に紹介しています。1~2地域の区分ではUA値が0.4以下、3地域区分ではUA値が0.5以下、4~7地域ではUA値が0.6以下と定められています。

UA値は【総熱損失量÷外皮表面積】で求めることが可能ですが、算出に必要な熱貫流率や抵抗値は断熱材の種類によってもピンキリで、必要な厚さも種類によって大きく異なります。そこで、今回は一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会が算出している、ZEH住宅の採用事例をまとめました。以下はすべて断熱材にグラスウールを使用した事例を掲載しているため、他の断熱材の厚みの事例を確認したい場合は下記の建産協の公式HPよりご確認ください。

※参照元:【PDF】建産協|ZEHのつくり方(https://shangrila-noie.com/pdf/zeh.pdf)

地域区分1~2:北海道【UA値0.4W/(m2・K)】

【事例.UA値0.38(m2·K/W)】

天井 ・吹込み用グラスウール18K LFGW1852、厚さ270mm
外壁 ・充填高性能グラスウール16K・14K GWHG16-38・14-38、厚さ105mm
・外張グラスウール32K GW32-36、厚さ60mm
・根太間グラスウール32K・高性能グラスウール24K GW32-36・GWHG24-36、厚さ42mm
・大引間グラスウール32K・高性能グラスウール24K GW32-36・GWHG24-36、厚さ105mm

地域区分3:北東北【UA値0.5W/(m2・K)】

【事例.UA値0.46(m2·K/W)】

天井 ・吹込み用グラスウール18K LFGW1852、厚さ270mm
外壁 ・充填高性能グラスウール16K・14K GWHG16-38・14-38、厚さ105mm
・外張グラスウール32K GW32-36、厚さ35mm
・根太間グラスウール32K・高性能グラスウール24K GW32-36・GWHG24-36、厚さ42mm
・大引間グラスウール32K・高性能グラスウール24K GW32-36・GWHG24-36、厚さ80mm

地域区分4:南東北【UA値0.6W/(m2・K)】
地域区分5~6:関東から九州【UA値0.6W/(m2・K)】
地域区分7:南四国・南九州【UA値0.6W/(m2・K)】

【事例.UA値0.56(m2·K/W)】

天井 ・吹込み用グラスウール18K LFGW1852、厚さ210mm
外壁 ・充填高性能グラスウール16K・14K GWHG16-38・14-38、厚さ105mm
・根太間グラスウール32K・高性能グラスウール24K GW32-36・GWHG24-36、厚さ42mm
・大引間グラスウール32K・高性能グラスウール24K GW32-36・GWHG24-36、厚さ80mm

地域区分8:沖縄【UA基準値なし】

ZEH住宅におすすめの断熱材

ZEHに使用する断熱材には、通常の断熱材よりも高性能なものを選ぶことが重要です。ZEHに最適な断熱材選びに役立つ情報として、ZEHに向いている断熱材・向かない断熱材の特徴をまとめました。

ZEH住宅に向いている断熱材としては、高気密・高断熱なものです。国土交通省によると、年間で8万円以上の冷暖房費を削減できると発表されています。
高性能な断熱材を利用すれば、冷暖房をつけなくても快適な暮らしを実現できます。廊下やお風呂などの寒暖差がなくなり、ヒートショックの予防にも役立ちます(※)。
また、結露もしにくくなり、カビやダニの発生を抑えられ、家を長持ちさせられるでしょう。

結露しにくく防湿施工も要らない「セルロースファイバー」

ZEH住宅に向いている断熱材としては、まずセルロースファイバーが挙げられます。パルプや古新聞などを細かく粉砕して作られた断熱材で、エコな断熱材として近年注目を集めています。繊維1本1本の中の空気が断熱性を高めるほか、燃えにくいのが特徴。ほう酸や硫酸アンモニウムを配合しているため虫がわきにくいメリットもあります。
施工は専用の機械で柱や壁に吹き付ける方法で行われ、断熱材を入れ込むことが難しい場所にも適しています。結露もしにくく、メリットが多い断熱材ではありますが、価格はやや高く、施工に手間がかかる側面もあります。

・熱伝導率:0.04w/mk
・耐火性:900度以上の火をあてても表面が炭化するだけで引火しない
・遮音性:音響透過損失51db、繊維と繊維の間で音がかきけされるため、シアタールームや防音室への使用も可能

断熱性・耐火性に優れた「フェノールフォーム」

フェノールフォームは、ZEH住宅に使用されることが多い断熱材です。断熱性能が高く、長期的に性能をキープできます。耐火性も高く130度まで耐えることができ、有害ガスもほとんど発生しません。
簡単に加工ができるため扱いやすい材料ではあるものの、価格が少し高めであるというデメリットも持ち合わせています。

・熱伝導率:0.02w/mk
・耐火性:130度の熱にも耐火性を発揮。発生ガスも少ない。
・遮音性:発泡プラスチック系断熱材と同様で、遮音性はあまり高くありません。

断熱材区分最高ランクの「高性能フェノールフォーム」

高性能フェノールフォーは、断熱材区分最高のFランクに該当し、高い断熱効果が期待できます。従来のフェノールフォームと比較しても、ホルムアルデヒドの発生が少なく使用制限もありません。地球環境だけでなく、人体への影響も少ない断熱材として注目を集めています。

・熱伝導率:0.019w/mk
・耐火性:炎が当たっても表面から炭化するだけで燃え広がりにくい。
・遮音性:発泡プラスチック系断熱材と同様で、遮音性はあまり高くありません。

安価な「グラスウール」には防湿施工が必須

グラスウールはリサイクルガラスを原料としており、住宅の様々な部分に断熱材として使用することができます。柔軟性があるため木材の乾燥、伸縮にも対応することができ、骨組みの部分への施工も可能です。
不燃性で有毒ガスが発生せず、防音性も高いため、映画館やコンサート会場でも使用されることも。一方で、材質自体に水蒸気が入りやすいという欠点があり、防湿施工が求められます。断熱材を検討する際は、安価な価格に飛びつかず、施工方法を含めて考えることが重要でしょう。

・熱伝導率:0.040~0.052w/mk
・耐火性:400度以上になると急激に収縮。ロックウールなどに比べると耐火性は劣る。
・遮音性:音響透過損失約54db、ピアノなどを使用しても小さく聞こえる程度。

通常より繊維が細く断熱性の高い「ハイグレードグラスウール」

高性能グラスウール・ハイグレードグラスウールは、通常のグラスウールよりも繊維が細く、断熱性がより高い断熱材です。薄くて軽く、ZEH住宅向けの断熱材と言えるでしょう。
吹き込み用グラスウールは、天井裏に吹き込む際に用いられており、リフォームにおいてもよく利用されています。一度吹き込むと撤去が難しいというデメリットがありますが、断熱性や軽さを重視する方によく選ばれています。

・熱伝導率:0.033~0.38w/mk
・耐火性:500度以上になると急激に収縮。ロックウールに比べると耐火性は劣る。
・遮音性:音響透過損失約54db、ピアノなどを使用しても小さく聞こえる程度。

グラスウールに比べやや高性能な「ロックウール」

ロックウールは無機系の断熱材で、グラスウールと同じく不燃性で火災にも強く、有害ガスも発生しません。防音性が高いという点もグラスウールと一致しています。
グラスウールと比べると、性能・撥水性・耐火性・吸音性が高く、よりZEH住宅向けであるといえます。とはいえ、グラスウールより価格が高く、防湿施工は必要なので、予算や手間を考えたうえで採用してみてください。

・熱伝導率:0.038w/mk
・耐火性:火事が起こった際、防耐火性能が失われるまでの時間は64分。無断熱やグラスウールよりも耐火性が高め。
・遮音性:音響透過損失約54db、ピアノなどを使用しても小さく聞こえる程度。

重要なのは施工力

断熱性能を気にするなら断熱材はもちろんのこと、施工業者選びも重要です。使う断熱材の厚さ・熱抵抗値・熱伝導率によってもUA値は変動するため、断熱性能を高めた住まいづくりを提案している施工力の高い業者に依頼しましょう。建設現場などを見学し、丁寧な施工が実施されているか確認するのも一つの手です。

まとめ

断熱材と一口に言っても予算や目的に応じて、選ぶべき材料は異なります。どの断熱材が向いているかは、専門家に相談してみましょう。エリア別にZEH住宅対応の会社をまとめているので参考にしてみてください。

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