これからのZEHとは
今後、日本はもとより世界中で取り組んでいくべき課題のひとつである省エネルギー問題。各国とも独自の省エネ対策を打ち出し、日本でもZEHをはじめとするさまざまな方針を打ち出していますが、その取り組みはまだ過渡期にあると言えます。
ZEHが抱える2つの問題
日本では2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」において、標準的な新築住宅については2020 年までに。さらに2030 年までには新築住宅の平均でZEHの実現を目指すという目標を掲げています。(出典:
http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/140411.pdf)
これにともない、経済産業省資源エネルギー庁では、平成24年度からZEH導入の費用を支援する「住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業(ZEH支援事業)」を実施するなどZEHの普及促進に努めていますが、その取り組みが功を奏しているとは言いがたいのが現状です。
ZEHの普及が進まない理由は大きく分けて2つあり、1つはZEHの定義が明確にされていないこと。そしてもう1つはZEHの認知度が全体的に低いことが挙げられます。
ZEHは国を挙げて支援している事業であるため、ハウスメーカー各社も独自の支援を取り入れています。しかし当初は具体的に「何をどうしたらZEHとして認定されるのか」などはっきりした基準がなかったため、メーカーによって目指す方向性がバラバラで一貫性を欠いていました。
そのせいか消費者の間ではZEHという言葉すら知らないという人も多く、それがZEHの普及を妨げている二大要因と言えるでしょう。
必然的に上がっていく消費者の認知度
経済産業省資源エネルギー庁では消費者のZEH認知度向上に向けて、2017年12月にZEHの定義をとりまとめました。ZEHと認定されるための住宅の条件(強化外皮の基準や再生可能エネルギーの導入など)が提示されたことにより、各ハウスメーカーも消費者に対してZEHのアピールや広告を打ち出しやすくなり、実際、各メーカーの公式サイトやカタログ、住宅展示場などではZEHに関する説明や自社商品がZEHの条件を満たしているかどうかなどの情報を明記しているところが増えてきています。
必然的に消費者の方も展示場やネットなどでZEHの情報を見聞きする機会が増え、認知度の向上および正しい知識の普及が進んできています。
業界全体の技術向上の期待
以前はZEHとして認定される基準が明確になっていなかったため、ハウスメーカーとしてもどこを目指すべきか判断できない状態にありました。
ZEHが定義された今、何をどうすればZEHの基準をクリアできるのかがはっきりしたため、ハウスメーカー業界全体が同じ方向を目指し、研究や技術開発に取り組んでいます。
その結果、ZEHのための新技術も進み、ZEH市場が活発になっていくことが予測されます。ZEHの基盤は高断熱外皮や太陽光発電などを代表とする省エネ設備の導入にあることから、今後の住宅は光熱費の削減や快適性・健康性の向上、防災・減災性能の進化などを期待できるようになるでしょう。
どのハウスメーカーを選んでも品質を保つ
大手ハウスメーカーは独自の研究開発や研修制度の導入によってある程度自力で技術者の育成を行うことができますが、中小工務店など小規模な企業では知識・技術力を養うことが難しく、対応が遅れてしまう可能性があります。
そこで国はZEH普及対策の一環として、中小工務店等のノウハウを確立するための取り組み支援を実施する方針を固めました。
ZEHを建築するための確かな知識と経験を有する技術者が育つことにより、将来的にはどのハウスメーカーを選んでも一定の品質を保ったZEHを建設することが可能となります。
需要が安定することによって標準化するZEH
ZEHは省エネ設備や高断熱外皮などを導入する関係上、一般的な住宅に比べると作る・買うためのコストが割高になっています。そのため、現在のZEHはオプションとして扱われることが多く、普及の妨げになっています。
ただ、ZEHが正式に定義されたことにともない、現在はハウスメーカー全体がZEHをアピールし、需要も高まりつつあります。
需要が安定すれば業界としても大量生産化によるコストの削減が可能となり、消費者にとって手の届きやすい価格帯で供給できるようになります。そうすればZEHは割高なオプションではなく、新築住宅に標準でついてくる当たり前のものになっていくでしょう。
平成24年から国が支援を開始
国ではZEHの普及を促進するため、平成24年よりZEHを新築する人、または既存の住宅をZEHに改修する人に対し、一定額を補助するという支援を開始しました。
支援が開始された初年度は交付決定件数はわずか443件にとどまっていましたが、平成25年度には1,056件の大台を突破し、平成26年度補正では6,147件と数が大幅に増加しています。
これはZEHの認知度が高まってきていることの証拠で、一定の効果が見込まれることから、国では今後もZEH支援事業を継続し、普及をバックアップしていく方針を固めています。
実際、平成26年度では補助対象となるのは断熱材や空調、給湯、換気、証明設備といった各種設備や機械装置、建築材料等に限定されていたのですが、平成28年度からは高性能建材や高性能設備機器、蓄電池の組み合わせによる導入なども補助対象に加えられるなど、支援の拡充が行われました。
今後ZEHの認知度が高まるにつれ、支援内容も充実していくことが期待されています。
【参考文献】
経済産業省. ZEH普及に向けて〜これからの施策展開〜 ZEHロードマップ検討委員会におけるZEHの定義・今後の施策など
経済産業省.ZEHの普及に向けて① ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス
経済産業省. ZEHロードマップ検討委員会とりまとめ