ZEHビルダーの現状
ZEH住宅が政府によって強く推奨され始めてから、ZEHビルダーの登録数は上昇の一途を辿っています。
現在のZEHビルダー登録数は6,300社以上
ZEHビルダーの登録を管理している「環境共創イニシアチブ」のZEHビルダー一覧を見ると、平成30年2月時点で見られるデータでは6,359件という登録数[1]です。
ZEHビルダーマークが公表されたのは、2016年11月の「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業 調査発表会2016」でのことなので、1年ほどで6,000社以上が登録したということになります。
この登録数の上昇率は、ZEHビルダー制度を実施している経済産業省も予想していなかったほどだと言われています。
2018年から「ZEHビルダー評価制度」が開始
ZEHビルダー登録数が予想以上に多くなってきたためか、2017年3月、経済産業省は、2018年から「ZEHビルダー評価制度」を実施することを発表しました。
ZEHビルダーとして登録しているビルダーであっても、ZEH普及への取り組み状況には違いがあります。ZEHを普及させようと熱心に取り組んでいるビルダーもあれば、そうでないビルダーも存在するということです。
それを受けて、ZEHビルダーとして頑張っているビルダーのランクを上げようとする制度が、ZEHビルダー評価制度です。
ZEHビルダー評価制度の評価基準
この評価制度の特徴としては、ZEH普及への貢献度を見るもので、ZEHを導入した住宅の品質を見るものではないということ。つまり、評価が高いビルダーであっても、品質の高いZEH住宅を造ることができるということにはなりません。
ただし、評価の高いビルダーは、ZEH住宅の建設に慣れているということになるので、慣れていないビルダーと比較すれば、技術力が高いとも言えるかもしれません。
「ZEHビルダー制度」とは
ZEHビルダー制度とは、経済産業省によって実施されている制度です。2016年に「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)支援事業」が開始されたことをきっかけに実施され始めました。
ZEHビルダー制度の必要性について
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)支援事業では、ZEHの住宅を新築、または改修した場合に補助金が支給されますが、補助金支給対象となるのは「ZEHビルダー」として登録されたビルダーを利用した場合のみです。
つまり、ZEHの住宅を建てて補助金を受け取ろうとした場合は、ZEHビルダーとして登録されたビルダーを利用しなければいけません。
ZEHビルダー制度開始前は、どのビルダーでZEH住宅を建てても補助金を受け取ることができましたが、今はZEHビルダーとして登録されているのか、ということを事前に確認しておく必要があります。
ZEHビルダーとして登録されるには
ZEHビルダーは定期的に公募されていて、ビルダーがそれに申請し、申請内容が確認されればZEHビルダーとして登録されるという流れになります。
ただし、登録されるためには条件があり、経済産業省に「ZEHの普及に貢献してくれるビルダー」であると認められなければ登録されません。
ZEHビルダーとして登録されるための条件には、ZEHの普及目標設定や、目標達成のために行われる方策を持つことなどがあり、それらを広く一般に公表する必要があります。
ZEHビルダーの登録申請は「SII」から
「SII」とは
「SII」とは、「一般社団法人 環境共創イニシアチブ(Sustainable open Innovation Initiative)」のことです。
環境共創イニシアチブは、平成23年2月に設立された法人で、環境やエネルギーの問題によって起きる課題を、解決させるための事業を行っています。
そして、ビルダーがZEHビルダーの登録申請を行うのも、環境共創イニシアチブからです。公式サイトではZEHビルダーの公募を行っており、ZEHビルダーとして登録されているビルダーの検索なども行うことが出来るようになっています。
ZEHの登録申請を行うには
ZEHビルダーの登録申請ができる時期は決まっており、例えば2017年の公募の場合、2017年4月4日~2018年1月31日となっていました。時期については年度によって変わりますが、毎年4月頃に公募が開始されているようです。
申請方法は、登録申請が可能な時期に、環境共創イニシアチブのサイトIDを取得してログイン。申請内容をサイトに入力した後、申請書類を印刷して、環境共創イニシアチブに送付します。
送付する書類は、ZEH事業計画書や誓約書となっており、会社概要書や印鑑登録証、資格証なども必要です。そのため、ZEHビルダーに登録されたビルダーは、公的に会社の内容が明らかになっていると言えるでしょう。
ZEH普及目標とは、2020年までにどれだけのZEH施行を目標にするかということです。ZEHビルダーとして登録するためには、この目標を決め、公開する必要があります。目標単位は個々の業者で決めることができ、次の中からひとつを選びます。
- 件数
- 戸数
- 軒数
上記のいずれかから、自社が目標とするZEHの割合を決定します。また、実際に施行した数に含まれるのは、受注、着工、完工で、いずれも対象にすることが可能。ただし、目標の単位と実績の単位は同じものではければいけません[2]。
ZEH普及目標のために、どのようなことに取り組んでいくか方策を持たなければいけません。この方策とは、具体的には次のような例が挙げられます。
- ZEHをPRする方法
- ZEHの性能を周知する方法
- 実際に施行するにあたっての工夫など
- 社員へのZEHの知識の充実
このように、ZEHを広く普及させるために、積極的にどのような方策を練っているかということを、具体的に示します。
ZEHの普及目標に対して、実際の普及数がどれだけであったのか、実績を報告し、公表する必要があります。報告する必要がある内容については次の5項目です[2]。
- 年間のZEHの割合
- 年間の住宅建築件数
- 年間のZEH建築件数
- 年間のNearly ZEH建築件数
- ZEH普及のために実際に行った取り組み
これらの報告内容のうち、公表が必要なのは「ZEHの割合」のみです。公表先として指定されているものは、自社のホームページや会社概要、消費者に提示することができる書類などです。この実績を、2020年まで継続的に公表することに合意しなければなりません。
「経済産業省の所管補助金交付等の停止及び契約にかかる指名停止措置」とは、補助金の不正受給などの違法なことをした場合、補助金の交付が停止されます。あまりないことではありますが、この措置が講じられているビルダーは、ZEHビルダーとして登録申請することができません。[2]
最初に設定したZEH普及目標の値を下げる変更は認められていませんので、現実的な目標を立てる必要があるでしょう。ただし、目標値を上げるための変更は可能のようです。
[1]参考:環境共創イニシアチブ『ZEHビルダー一覧』
[2]参考:環境共創イニシアチブ『ZEHビルダー公募』
ZEHビルダーに登録されるための条件
ZEHビルダーとして登録されるためには、以下の5つの条件をクリアする必要があります。
ZEHビルダー登録の条件は5つ
1、ZEH普及目標を持つ
2、ZEH普及目標を公表する
3、ZEH普及目標達成のための方策を持つ
4、ZEHの施工実績を報告し、報告事項の公表に合意する
5、経済産業省の所管補助金交付等の停止及び契約にかかる指名停止措置を受けていない[2]
まず2020年までの各年度に対して、ZEHの建築件数の目標を立て、その目標を公式サイトなどで公表する必要があります。そしてその目標を達成するために、どういった方策を考えているか、という点も審査されます。
ほか、ZEHの施工実績をすぐに報告・開示できるかという点や、経済産業省から所管補助金交付等の停止及び契約にかかる指名停止措置といったペナルティを受けていない、というのもチェックされるポイントです。
こうした要件をクリアしてはじめて、ZEHビルダーとして認定されることとなります[2]。
ZEHビルダー登録の区分
ZEHビルダーには、地域による区分と手掛ける住宅の種類による区分があります。
まず地域による区分ですが、これは大きくA登録・B登録の2つに分けられます。A登録は北海道、B登録は北海道以外の都府県で活動している場合に適用されます。もし対応エリアが双方に跨っている場合は、A・Bそれぞれ別個に目標を立て、登録することとなります。
続いて住宅の種類による区分ですが、これは「注文住宅」「建売住宅」「既存改修」という3つに分けられます。
これらも、対応できるなら複数の区分を登録することが可能となっています。また、複数の区分を登録する場合、目標となる施工実績の数値を合算することも認められています。
こうしたZEHビルダーの登録は、1つの業者につき1つまでと決まっています。支店や子会社、フランチャイズ展開等、グループで営業を行っている場合でも、登録できるのはグループ全体で1社のみということになります。
ZEHビルダーを探す際は、例えば注文住宅なら注文住宅ZEHビルダー、戸建てなら戸建てZEHビルダー、といったように、業者がどういう施工を得意としているのかをチェックされることをおすすめします。
また、もしZEHビルダーが何らかの不正行為(目標数値の誤魔化し等)を行っている場合、のちのちZEHビルダーの登録が抹消される、といったこともあり得ます。
そうなると、せっかく家を建ててもZEHとして認められない可能性も出てきてしまいます。本当に信頼できる業者かどうか、という点も、依頼前に口コミや実績などでチェックしておきたいところです。