2025年4月から「省エネ基準適合」が義務になる
2025年4月以降、すべての新築住宅において「省エネ基準適合」が義務化されることとなっています。省エネ住宅はランニングコストを抑えながら健康かつ快適に過ごせる住宅というメリット・特徴があり、優遇制度なども充実しています。一生で一番大きな買い物にもなるマイホームの購入ですから、立地や間取りなどだけではなく、住宅の「省エネ性能」もしっかりとチェックして、自分や家族に合った住宅選びを行うようにしましょう。なお、この「省エネ基準適合」に関しては、今後さらに2030年まで段階的な基準の引き上げが行われることとなっています。このページでは具体例を紹介・解説していきますので、ぜひチェックして参考にしてください。
ZEH壁量等基準見直しのポイント
2025年4月以降は、住宅を含めたあらゆる新築建造物が「断熱材の厚さ」や「窓の構造」などについて省エネ基準(H28省エネ基準)を満たすことが義務化されます。なお2022年10月以降、各認定制度の基準が強化されており長期優良住宅等認定住宅はZEH水準の「断熱等級5」「一次省エネ等級6」の省エネ性能が求められることとなっています。その際に、長期優良住宅においては耐震性の基準が「耐震等級2以上」から「耐震等級3」へと引き上げられています。また、2030年にはこの省エネ基準が「ZEH基準レベル」へと引き上げられる予定となっています。住宅の省エネ化や重量化に対応し、安全性をきちんと確保するために構造規定が見直される流れとなっています。
壁の構造基準(壁量計算)の見直しについて
壁量等構造基準が改定されることになるのは、ZEH水準の省エネ性能をもつ住宅となっています。具体的に説明すると「断熱等級5」かつ「一次省エネ等級6」に適合した省エネ性能が高い住宅であり、これらの住宅は断熱材が増加していることや高断熱窓サッシを採用していること、太陽光発電設備を設置していることなどに起因し家全体が重量化しているためです。
個々の建築物の荷重の実態に応じて検証
- <算定式(床面積あたりの必要壁量)>
Lw =(Ai・Co・Σwi)/(0.0196・Afi)
Lw:床面積あたりの必要壁量(cm/㎡)
Ai:層せん断力分布係数
Ai=1+{(1/√αi)-αi}×2T/(1+3T)
固有周期T=0.03h(秒)
αi:建築物のAiを算出しようとする高さの
部分が支える部分の固定荷重と積載荷重
との和を当該建築物の地上部分の固定荷
重と積載荷重との和で除した数値
h:建築物の高さ(m)
引用元:木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための 必要な壁量等の基準の見直し(案)等の概要(令和5年12月版)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001519525.pdf)
必要壁量については今後新しい必要壁量計算方法が追加されることとなります。実際の建物荷重を推定して算出する計算方法となっており、これまでより設計する建築物の実態荷重に近い形となります。また、現行の壁量確認方法に加え、新たにZEH水準等の建築物に対応する基準が追加されることとなっています。
現行規定と同様に簡易に確認する方法
現行の壁量を確認する方法に、新しくZEH水準などの建築物に対応する基準が追加されることとなります。なお、現行の規定においては耐力要素として見込んでいない腰壁や袖壁など、準耐力壁などについても算入できるようになることに加え、一定程度の高い耐力をもつ壁に係る「壁倍率」の上限を引き上げるように見直されることとなっています。なお、構造計算(木造若しくは鉄骨造の建築物又は建築物の構造部分が構造耐力上安全であることを確かめるための構造計算の基準を定める件(昭和 62 年建設省告示第 1899 号)に定める構造計算)によって安全性を確認する場合においては、令第 46 条第 4 項の必要な壁量の確認を省略することが可能となります。
柱の構造基準(柱の小径)の見直し
- <算定式(必要な柱の小径)>
de / □ = 0.027 + 22.5・Wd / □ 2
de : 必要な柱の小径(mm)
□ : 横架材相互の垂直距離(mm)
Wd : 当該階が負担する単位面積あたりの固定荷重と積載荷重の和(N/m2)
※積雪荷重は含まない。
引用元:木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための 必要な壁量等の基準の見直し(案)等の概要(令和5年12月版)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001519525.pdf)
柱の小径は横架材間の距離に指定の係数を乗じて算出しますが、柱における構造基準の見直しにより「ZEH水準等の建築物」「ZEH水準等の建築物(多雪区域)」が追加されています。例えば2階建の1階、横架材間垂直距離が2700mmの柱であった場合、軽い屋根では柱の小径が90mm以上、ZEH水準等の建築物の場合は108mm以上が必要になります。となります。通常105mm角、もしくは120mm角の柱を使用しますが、この場合においてはZEH水準などの建築物でこれまで使われてきた105角の柱は使用することができず、120角の柱を使用しなければいけません。
構造計算(柱の座屈検討)により安全性を確認する場合は、柱の小径の確認を省略可能
壁量計算と同じく、構造計算(「木造の柱の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件(平成12年建設省告示第1349号)」に定める構造計算)により安全性が確認された場合においては、柱の小径の確認を省略することが可能となっています。
まとめ
こういった環境に関連する制度などは時代の流れとともに大きく変化を伴います。度重なる災害を経験することにより住宅や設備はどんどん新しいものになっていきますので、そういった流れにきちんと対応できるよう、各種制度などの情報は定期的にアップデートしましょう。これから住宅を新築される方は、構造基準についてきちんと学び、構造強化だけでなく制震・耐震についても検討してみてください。