防音と遮音と吸音の違い
防音とは
防音は、読んで字のごとく音を防ぐということ。家の外の音が家の中に入ってこないように、また室内の音が外に漏れたりするのを防ぐことを意味しています。
遮音・吸音と違い、防音は具体的な方法のことではありません。「防音対策」や「防音素材」と呼ばれているものは、実は遮音や吸音のための対策や素材のことを意味しています。
遮音とは
空気中を伝わってくる音を遮って、外に音を通さないようにすること。遮音はこのページで挙げた防音対策の中でも、1番簡単にできる対策といえます。
遮音の仕組みは、伝わってくる音を跳ね返して音を遮断させるというもの。例えば、部屋の中で音楽を聴いている場合は、壁やドアや天井が音を跳ね返してくれます。音漏れの心配が少なくなりますが、あまり遮音性の高い家にしてしまうと、跳ね返ってきた音が反響してしまい、室内での音が聞こえづらくなってしまうというリスクが。さらに聞こえる音が元の音と変わってしまうというデメリットもあります。
遮音をするためには、鉄板やコンクリート、石膏などの素材を使います。これらの素材は遮音性に優れた素材ですが、費用がかかり重量も重いため、施工するのが大変という点も特徴の1つとして挙げられます。
吸音とは
吸音も遮音と同様に音を防ぐための方法です。吸音は字の通り音を吸収することで音が反射してしまうのを防ぎます。それによって、音が部屋の外に出てしまうことや室内で反響してしまうことを抑制するという方法です。
吸音の仕組みは、細かい穴がたくさんある素材を使った壁や天井が、音を吸収するというもの。素材はグラスウール、ロックウール、ウレタンフォームなどが多く使われています。
外に音が漏れることなく、さらに室内で聞こえる音の聞こえ方もクリアというところが特徴。吸音性を求めすぎてしまうと、反響音がまったくなくなってしまい物足りないと感じてしまうこともあるそうです。

集合住宅においての音についての不満
「集合住宅の音環境に対する居住者意識と住まい方に関する研究」に際して行われたアンケート※では、「遮音・防音」の項目は住まいの選定条件の際には優先順位が高くなく、12項目中真ん中程でしたが、現住居の改善希望項目では分譲では2位、賃貸では3位になっています。
集合住宅など、上下階や左右に部屋があるような住宅を借りたり購入したりするとき、
- ・間取り
- ・日当たり
- ・使い勝手
などばかりに目が行きがちです。
騒音は、見学だけでは現状認識が難しい点であるうえに、毎日の生活に関わるため、不満として出てきやすい傾向にあります。集合住宅では上下階や両隣の騒音がよく挙げられますが、一戸建てであれば、建物内でのドアの開け閉め、歩く音などが響かない方がより快適です。また、防音にしておくことで、外からの嫌な音も防いでもらえます。これから家をあらかじめ騒音を防ぐことができるのであれば、騒音対策は必須になってきます。
特に、高速道路や大きな幹線道路、電車の軌道、空港やイベントホールなどが近くにある場合は、快適に生活していくうえで、防音対策は必須です。たとえ静かな住宅地であっても、周辺道路などで工事が行われたりすることもあります。新しく住宅を建てる場合は、防音対策は必要不可欠な事柄といえます。
また、集合住宅では、騒音の原因として、上階からの音と答えている比率が高い傾向にあります。クッションフロアにするなど、できるだけ防音にする工夫をすることが望まれます。
参考:1994年12月「集合住宅の音環境に対する居住者意識と住まい方に関する研究」木村翔、井上勝夫、荘美知子、藤沢一弘
2017年7月1日「判例分析からみた音環境トラブルの実態」丸山明恵,井上勝夫
※アンケートの調査名称:集合住宅の音環境に対する居住者意識と住まい方による居住性能の総合評価
調査期間:1992年10月から1993年7月
調査対象者:以下1~3を合わせたものを選定条件とし、主に多摩地域、千葉地域の東京近郊で、これらの条件に適合する、分譲の13団地(2528戸)、賃貸の3団地(1106戸)を調査対象団地として選定。1. 昭和50年以降の建設で、特に性能が向上してきている昭和60年代以降のものを中心とする。2. 両親・子供2人の家族構成を基準と考え、標準的に3LDK程度の間取りを有する住戸で構成された団地とする。3. 各団地毎の傾向を統計量として把握し、比較出来るように、1団地当たり100戸以上の管理戸数を有するものとする。
調査人数:配布総数3634票に対して、回収総数は2394票(回収率:66%)。
音についての不満を解消することで
どれくらい快適になるのか
防音対策がなにもされてない場合、このような弊害がおこることが考えられます。
- ・会話、電話、TV、ラジオ等の聴取妨害
- ・日常生活妨害
- ・頭痛などの体調不良
また、自分が迷惑をかける側になる場合も考えられます。前述の研究論文において、集合住宅における生活マナーとして気を付けているアンケート※では、騒音に関わる点として、下記のような項目が挙げられています。
- ・テレビ・ステレオの音量にはいつも気をつけている
- ・窓、雨戸、ふすま、ドア等は静かに開閉するようにしている
- ・掃除機・洗濯機を使用する時間帯には注意している
- ・上下階の居住者とはお互いさまの気持ちで、おつきあいをしている
また、聞こえてくる音としては、
- ・ピアノや楽器
- ・子どもの声
- ・子どもの飛び跳ね
- ・物の落下音
- ・話し声
などが挙げられています。
防音を施しておくことで、聞こえてくる騒音を防いでくれるとともに、自分や同居の家族が騒音源になることを防いでくれます。例えば、子どもに楽器を家で練習させたい場合も近所に気を使うことなく可能になります。
また、子供が少しぐらい走ったとしても、防音が施されていると安心です。また、朝は忙しいので夜のうちに洗濯を済ませておきたい人にとっても、近所に音が響くことを気にしなくて済みます。このように、遮音・吸音などの防音を施しておくことで、のびのびと快適に生活ができるようになります。
2009年10月6日「交通騒音と住宅の防音対策」木村翔
※アンケートの調査名称:集合住宅の音環境に対する居住者意識と住まい方による居住性能の総合評価
調査期間:1992年10月から1993年7月
調査対象者:以下1~3を合わせたものを選定条件とし、主に多摩地域、千葉地域の東京近郊で、これらの条件に適合する、分譲の13団地(2528戸)、賃貸の3団地(1106戸)を調査対象団地として選定。1. 昭和50年以降の建設で、特に性能が向上してきている昭和60年代以降のものを中心とする。2. 両親・子供2人の家族構成を基準と考え、標準的に3LDK程度の間取りを有する住戸で構成された団地とする。3. 各団地毎の傾向を統計量として把握し、比較出来るように、1団地当たり100戸以上の管理戸数を有するものとする。
調査人数:配布総数3634票に対して、回収総数は2394票(回収率:66%)。
全て自費?自衛隊基地周辺の住宅防音工事について
自衛隊や在日米軍の飛行場周辺の住宅の所有者・居住者は、航空機による騒音を防止又は軽減するための防音工事の助成を行っています。工事の内容は
- ・換気扇
- ・冷暖房機
- ・防音天井・壁及び防音サッシの設置
などで、申請すれば原則100%助成を受けることができます。
まず「住宅防音工事希望届」を提出すると、「防音事業補助金交付申込書」が配布され、必要な手続きが行われます。
参考:「住宅防音工事の助成」防衛省北関東防衛局
「飛行場周辺の住宅防音工事」防衛省南関東防衛局
防音工事の対象について
防音工事の補助金対象となるには、条件が設定されています。
航空機騒音度ごとの区分と対象の住宅が建設された時期によって対象になるかどうかが異なります。
航空機騒音度ごとの区分で対象となる地域は、第一種地域、85WECPNL以上の区域です。WECPNLとは加重等価平均感覚騒音レベルで、一日の騒音の最大値の合計や発生回数などから求められます。浜松飛行場周辺では、対象区域で防音工事を希望した人に対する工事はおおむね終了しています。
対象区域について
飛行訓練の場所の変更(硫黄島など)や主力機の変更などの要因で、対象区域や世帯数は減少傾向にあります。
参考:「希望届受付対象住宅について(令和3年7月30日以降)」防衛省南関東防衛局
「浜松飛行場周辺の住宅防音工事対象区域(第一種区域)等の見直しについて」防衛省南関東防衛局
平成25年1月「航空機騒音評価指標の変更について騒防法※政省令改正Q&A」国土交通省